「エプロンメモ」 暮しの手帖社

雑誌「暮らしの手帖」に毎号連載されている「エプロンメモ」。
「エプロンメモ」とは、家庭の中でのちょっとした思いつきや工夫をメモにしたという意味でつけられたコーナー名だそうです。
こちらの本は、昭和29年9月発行の暮しの手帖第1世紀25号から約30年間分の「エプロンメモ」連載の中から、選び、春夏秋冬のシーズンに分けてまとめられたものだそうです。

この本が我が家の本棚にやってきたのはもうしばらく前のことで、どこの書店で何をきっかけに購入したかも覚えていないほどです。
また、長く手元にあるにも関わらず、最初から最後まで通読したことがないという不思議な本です。
でも、目的もなく手に取って数ページ読んでいるうちに、
「あ、これやってみよう」というヒントをくれたり、
具体的なヒントではなくても、忙しさに流されていた自分を省みるきっかけをくれたり、
遠くで暮らしている家族のことを思い出させてくれたり、
思いがけないプレゼントをくれるような本です。

特に私がいちばん気に入っているメモです。

「気はこころ」

夜おそく帰ったとき、家の人はもう寝てしまって茶の間は真っ暗、というのは、なんとなくわびしいものです。
夜おそく帰る人がいるときは、テーブルの上に電気スタンドをつけておきます。
ボウッと明るくなっているはたに、「お風呂から上がったら食べなさい」などというメモとケーキがあったりするのは、なんともいえずうれしいものです。


「暮らしの手帖」との出会いは、私が小学生の頃でした。
母親の本棚に唯一置いてあった雑誌が「暮らしの手帖」でした。
棚から引き出して表紙をみると、発行された日付が十年近く前のものでした。
不思議に感じて母に尋ねてみると、
それは、仕事に就いて実家を離れ、忙しい生活を送っていた母への祖母からの贈り物だったそうです。
「どんなに忙しい毎日でも、丁寧に暮らしなさい」という手紙と一緒に、「旅の手帖」という雑誌とともに時々送られてきたものをとって置いたのだそうです。
兼業主婦で60歳まで仕事を続けた忙しい母が、「暮らしの手帖」を開いて読んでいる姿は一度も見たことはありませんでしたが、
私が「エプロンメモ」を読むと心が落ち着くのは、書かれているエピソードが我が家の風景によく似ているからかもしれません。

暮しの手帖』に毎号掲げられる花森安治のことば。

「これは あなたの手帖です
いろいろのことがここには書きつけてある
この中の どれか 一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮しに役立ち
せめて どれかもう一つ二つは
すぐには役に立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたの暮しの手帖です」


エプロンメモ

エプロンメモ