「抱擁あるいは、ライスに塩を」

抱擁、あるいはライスには塩を

抱擁、あるいはライスには塩を

おもしろく読めました。
今回の作品は暗くなかったです(ヨカッタ!)

江國香織は大好きなのですが、購入時に少し迷いました。
最近の作風がどうも苦手で、読後にくらーい気分になってしまうことが続いたからです。
出口のない問題提起のような。わかるけど、そういうことに焦点あてないでほしいなぁという主題とか。
なぜかといえば、
私が江國香織を読みたいのは、日常生活の中で見落としたり忘れかけたりしている感性を取り戻したいなぁって思うからなのです。
つまり、人生ってまぁ、いろいろあるけどいいじゃないって感じたいからなのです。

この本の中には、そういう部分を少し感じました。
それに、登場人物が多様で面白かったです。

東京神谷町に住む柳島家の家族の物語です。
ロシア人の祖母絹、その娘の菊乃、その子供たち、そしてそれぞれの兄弟姉妹や夫、恋人たちが登場します。
一人一人に静かながらドラマチックな出来事があり、それぞれが一人称で一つの章を語るという形で物語はすすんでいきます。
しかも、時系列ではなく、1987年の次に1960年の章がつづいたりするので、
読者は、少しずつパズルを組み立てるように全貌を覗いていく感じです。
思えば、こういう感覚は、実際の人生もそうかもしれませんね。

タイトルにある「ライスに塩」、おいしそうですね。
試してみようと思います。